不動産の個人間売買!リスクの大きさを理解したうえで取引を進めよう
「物件をなるべく買い取りたい」と考えたとき、どのような方法を取りますか?中には、不動産仲介業者への手数料を節約するために、友人などツテを使って個人で契約を進めようと考える方もいるのではないでしょうか。しかし、不動産の個人売買にはさまざまなリスクがあるので注意が必要です。
個人間でも不動産の売買は可能
不動産の仲介業者を通さずに、個人間で直接不動産の契約を進めることを「不動産の個人間売買」といいます。個人館売買の最大のメリットは、業者に仲介手数料を支払う必要がないため、費用を抑えられることです。また、支払い方法や契約などを売主と買主の相談によって自由に決められるため、交渉次第では理想の条件を叶えることもできます。
不動産の個人間売買は、合法
不動産を個人間でやりとりするのは違法じゃないの?そんな印象を持つ方も多いかもしれませんが、法律的には特に問題ありません。不動産会社のように、売主の代理を行い利益を得る場合には「宅建士」という資格が必須となります。しかし、売主と買主が代理を通さず直接やり取りする場合には、法的な規則がありません。
個人間売買にひそむリスク
コスト削減や自由度の高い不動産の個人間売買ですが、その分さまざまなリスクが伴います。具体的にどのようなリスクが生じるのか把握したうえで、個人間売買をするかどうか判断しましょう。
契約までに時間と手間がかかる
不動産業者が仲介する場合は、知識をもったプロがマニュアルに沿ってスピーディーに手続きを進めてくれるため、買主が自ら行動することはありません。しかし、個人間でやりとりする場合には、契約書の作成・支払い方法・決済日・今後の支払いスケジュールなど、全て自分で組み立てていかないといけないため、時間と手間がかかります。
物件の欠陥が見つけにくい
不動産業者が関わる場合、他の物件と比較して建物の欠陥や築年数・過去のトラブルなどの情報を開示してくれます。とくに、シロアリや水漏れなどの物理的瑕疵(欠陥)・自殺・火災事故の履歴などの心理的瑕疵は法律によって、開示しなくてはいけないというルールになっています。
しかし、個人間で取引する場合にはそのような瑕疵が隠されてしまったり、売主が気づいていないというケースがあるため、契約後のトラブルになることも少なくありません。
住宅ローンが利用できない
一般的に、住宅ローン利用のための審査には、売買契約の条件などが記載された「重要事項説明書」の提出が必須となっています。この書類は、宅地建物取引士という資格を持っていないと作成することができません。そのため、ローン審査を受けることができず、支払いは一括か分割で支払うことになってしまいます。たとえローンを受けることができたとしても、貸付条件が厳しくなる恐れがあります。
特約の設定の難しさ
個人で契約する場合は、契約の条件まで全て自分で設定しなければなりません。契約事項の中には、建物の状況・位置関係によって特約を設ける必要があります。こちらも、通常であれば資格を有しているプロが行う作業です。主な特約は以下の通りです。
・物件の引き渡し条件
・災害が生じた場合の危険負担について
・手付金・補償金の設定
・固定資産税の積算
・契約違反となる条件
資格や知識を持たずこのような特約を制定することは非常に難しく、時間がかかってしまったり、上手く特約の作成ができずにトラブルにつながる恐れもあります。
売主が契約不適合の責任を問われる
不動産の個人間の売買は、買主だけでなく売主もリスクを伴う場合があります。引き渡した物件にシロアリや雨漏りなど、説明責任がある問題を売主が買主に伝えていなかった場合、契約不適合と判断され、買主から損害賠償や契約解除を請求されてしまいます。
個人間売買の手順とは
さまざまなリスクを把握したうえで、個人間売買を行うと決めたら、安全に契約を成立させるための手順を確認しましょう。
買主の選定
まずは、物件の買い手を探さなくてはなりません。知人の紹介や友人に声をかけることが一般的ですが、インターネットを使って広告を出す方法もあります。
知り合いとのやりとりは顔が知れている分スムーズに契約まで運べますが、インターネットを使用する場合は、見ず知らずの相手とのやり取りや、相手に合わせたスケジュール管理など大変な作業になります。サポート体制が充実しているサイトを使って、少しでも負担を軽減しましょう。オススメのサイトは以下の3つです。
・e-物件情報
・ジモティー
・不動産直売所
これらのサイトは、地域を限定できる・代理人のサポートを得られる・仲介手数料が無料など、売主と買主双方にメリットがあるようなサービスを受けられます。
契約交渉
不動産の価格・支払い方法・違反事項など細かな設定を行い、条件を交渉しましょう。個人間での取引では、契約成立後にトラブルが発生する場合が非常に多いため、契約内容の設定・相手とのすり合わせがとくに重要です。
契約締結・手付金の交付
契約内容に双方が十分に納得できたら契約書を作成し、契約締結します。この際、買主から売主へ「手付金」というお金が支払われます。手付金とは、3つの重要な役割を持っています。
・契約が成立したことを証明する
・物件を解約したい場合の代償としての役割
・契約に関して、売主か買主に債務不履行があった場合に支払われる
不動産の売買には多額の金額が発生するため、手付金を通じてお互いに契約を簡単にキャンセルできないような、いわば保険をかけるような役割があります。
決済と引き渡し
契約締結が完了したら、買主は残額を支払って決済します。一般的に一括払いか分割払いのどちらかの支払いが必要ですが、分割払いは支払いが滞ってしまうリスクもあります。売主は、物件を引き渡し、名義の変更手続きを行いましょう。
安心して取引したいなら不動産会社の利用がおすすめ
個人間での不動産売買は、さまざまなリスクを伴うため、不動産業者に仲介をお願いすることを強くおすすめします。仲介手数料が発生するといったデメリットはありますが、それよりも大きなメリットを得ることができます。
時間と手間がかからない
不動産業者は、さまざまな物件を取り扱っているため、契約書作成・トラブル対処のための詳しいマニュアルを持っています。資格を有した不動産のプロが、日程調整・交渉・契約書の作成などを円滑に進めてくれるため、時間と手間をかけずに契約まで運べます。これは、売主・買主の双方にとって大きなメリットです。
住宅ローンが組める
不動産業者では、宅地建物取引士がローンを申請するための重要事項説明書を作成することができます。そのため、個人取引よりも住宅ローンを利用しやすくなるため、物件の需要が増え、支払い未納のリスクも削減できるのです。
物件の調査も任せられる
個人間売買の場合、売り手にとって一番リスクを伴うのが物理的瑕疵を見逃し、後に契約不適合の責任を問われることです。不動産業者に委託をすれば、物件状況を事前にしっかりと調査をしてくれるため、トラブルを回避することができます。
不動産の個人間売買は、費用削減などのメリットがありますが、契約に関する全ての行程を自分で行わなくてはならないため、リスクが高く資格がなければできないようなこともたくさんあります。不動産業者に契約を任せることで、売主にとっても買主にとってもトラブルを回避できて安全で、スムーズにやり取りができるでしょう。